雲仙観光ホテル

雲仙温泉街の南に位置する雲仙観光ホテルは、1935年10月10日に竣工した。既に80年の歳月を重ねたクラシックホテルである。資料によれば長崎県が建築主で、竹中工務店によって建築された。




重厚なロビーの一角にフロントがあり、こちらで入浴をお願いする。立ち寄り湯はランチが条件である。
浴場は右手奥。格子の扉を開け右へ折れる。階段をカーブしながら下ると浴場入口である。アイボリーの壁と深い色合いの木が落ち着いた印象を与える。飾りガラスに書かれた紳士用の扉を開けると清潔感溢れる脱衣所が迎える。
同じ折り目で重ねられたハンドタオルとバスタオルはやわらかく肌に接する。靴は鍵付きの専用ロッカーに入れる。脱衣棚は鍵付きのボックスで、背面には3連の洗面台が備わる。アメニティに不足があるはずもない。




ステンドガラスがはめ込まれた扉を開けると洋風の浴室が現れる。ドーム状の天井は淡い白色で12のアーチを描きながら半円を描いている。右手に主浴槽、左手から向かいの壁にかけて洗い場が並ぶ。
主浴槽は湾曲を描き、控えめな面積に留まる。壁際には細長い湯口が設けられ、音もなく浴槽の壁を伝い湯が注ぐ。口に含むと強い酸味と苦味を覚える。硫化水素臭は思いのほか弱い。満たされた湯は極薄い白色に濁り、浴槽底の一部には温泉成分が白く沈んでいる。




源泉はお糸地獄で、湧出地はホテルの所在地と同じ表示である。源泉温度は94℃に達し、加水され供給されているようだ。
洗い場にはアメニティが揃う。供給されている湯は白湯である。かかり湯もまた白湯である。




浴室にあるもうひとつのステンドガラスの扉を開けると露天が現れる。限られたスペースに小ぶりの浴槽が設置されている。雲仙の風景と風が肌の火照りを心地よく冷ます。やはり音も立てずに湯口から湯が注がれ、淵に刻まれた溝からは溢れた湯が流れ去っていく。




雲仙地獄周辺のような賑わいとは無縁の、落ち着いた空気がホテルを包む。体を洗う、湯を楽しむに加え、おくゆかしいもてなしで心まで癒された。


雲仙観光ホテル
雲仙市小浜町雲仙320
0957(73)3263 HP
酸性・含鉄・含硫黄-アルミニウム-硫酸塩泉
94.5℃
シャンプー類あり ドライヤーあり
内湯 露天
1080円(ランチの方のみ立ち寄り湯可。ランチは予約を)
11:00~17:00
2015/10/12